太陽系の物質は新星爆発でも作られていた

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京都産業大学の観測研究により、2012年に出現した新星の窒素の同位体比が、プレソーラー粒子のうち唯一起源がはっきりしていなかったものと一致していることが示された。超新星爆発や古い星の核融合といった元素合成プロセスのほかに、新星爆発を由来とする元素が太陽系に存在することが初めて明らかになった。

【2015年3月3日 京都産業大学 2012年3月に静岡県の西村栄男さんが発見したへびつかい座の新星(V2676 Oph)の光の分析から、この新星の窒素の同位体比が、これまで起源が不明だった「プレソーラー粒子」と一致することがわかった。

2012年3月27日に撮影されたへびつかい座の新星
2012年3月27日に撮影されたへびつかい座の新星(画像中央の十字マーク)(撮影:遊佐徹さん)

プレソーラー粒子とは、同位体比(同じ元素で異なる重さを持つ「同位体」の比率)が太陽と大きく異なる粒子のことで、隕石の中に見つかる。同位体比を調べると、数ある元素合成プロセスのうち、どの現象で粒子が作られたかを探るヒントが得られる。古い星の核融合や超新星爆発などの起源を示すプレソーラー粒子がこれまで多く見つかっているが、起源が不明なものもあり、理論的な研究から新星爆発の際に起こる熱核暴走反応で作られるとみられていた。

京都産業大学の河北秀世さんらによる今回の研究は、新星の窒素の同位体比(窒素14Nと窒素15Nの存在比)を世界で初めて観測から決定することに成功したもので、その値は起源が不明だったプレソーラー粒子の値に相当していた。これでプレソーラー粒子の起源がほぼ全て解明できたことになり、太陽系を作っている物質がどのような天体で合成された物質なのか、という全容がようやく明らかになった。

プレソーラー粒子の炭素および窒素の同位体比の分布
プレソーラー粒子の、炭素および窒素の同位体比の分布。新星に見られる同位体比は、起源が不明だった粒子(赤)の同位体比と合致している(提供:発表資料より)


へびつかい座の新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。「ツール」メニューから「データ更新」した後、「へびつかい座V2676(2012)」を検索・表示してください。

また、新しいデータや番組を入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。