赤道に大きなクレーター?「はやぶさ2」リュウグウ到着まであと1週間
小惑星探査機「はやぶさ2」は、日本時間(以下同)6月14日の21時から15日の5時10分ごろにかけて、望遠の光学航法カメラ「ONC-T」を使って700km~650kmほどの距離からリュウグウの姿を連続撮影した。この画像から動画が作成され、リュウグウの自転軸は上下方向に近い(黄道面に垂直に近い)ことや、自転方向が公転方向に対して逆行していることが明らかになった。また、大きく角張っているリュウグウの表面の様子やクレーターのような窪みの存在も確認された。
その約3日後の6月17日15時ごろと6月18日6時ごろ、「はやぶさ2」はさらにリュウグウに接近し、それぞれ約330kmと約240kmの距離からリュウグウを撮影した。
《渡邊誠一郎プロジェクトサイエンティストによる解説》
この画像の上方向は、小惑星公転面に対して地球の北極がある側で、公転面の垂線に対して10度ほど反時計回りにずれています。複数の時刻の画像から、リュウグウの自転軸の向きは、小惑星の公転面に対してほぼ垂直に近いことがわかります。小惑星の自転の回転方向は地球の自転と反対の逆行回転で、自転周期は7時間半ほどです。
リュウグウの直径は900m程度とみられ、地上観測の予測と整合的です。ただし、探査機とリュウグウの距離が正確には決められていないため、正確な直径は現時点では不定性があります。全体の形状は、赤道部分がふくらんだコマ(独楽)の形で、高速で自転する小型小惑星に多く見られる形です。NASAの小惑星探査機「オシリス・レックス(OSIRIS-REx)」ミッションの探査対象である小惑星「ベンヌ」((101955) Bennu)や、アメリカのDART計画の対象小惑星「ディディモス」((65803) Didymos)、地球接近時にレーダー観測された小惑星「(341843) 2008 EV5」などに似ています。
小惑星の表面には、クレーター状の円形のくぼみ地形がいくつも見られます。この画像では、赤道付近に直径が200mを超える大きなクレーター状地形が見られ、自転に伴い、左に動くと底部が日陰になって暗くなっていくことがわかります。
赤道のふくらみは山脈のように連なるリッジとして一周していて、それ以外にもリッジ状の地形や岩塊らしきふくらみも見られます。地形の詳細は、今後より解像度が高くなるとわかってくると思います。
《吉川真ミッションマネージャーのコメント》
この画像を見て、リュウグウの形がオシリス・レックスミッションの目的地のベンヌや、ヨーロッパで検討されたMarcoPolo-Rミッションのターゲットの2008 EV5と非常に似ているということに驚きました。ベンヌと2008 EV5は、リュウグウと比べると直径は半分(体積は8分の1)くらいで、自転周期もリュウグウの半分くらいです。つまり、これらの天体は、小さくて速く自転しているわけです。それなのに形が似ていると言うことは何を意味しているのでしょうか。ベンヌはB型小惑星ですが、B型はC型に非常に近いので、ベンヌ、2008 EV5、リュウグウに共通する性質はC型ということになるかと思います。このように性質の相違性や共通性がある中で、形は似ている…非常に興味深いと思います。これまで探査された小惑星は、それぞれ形が異なっていましたが、リュウグウとベンヌは、初めて同じような形の小惑星への探査になるのかもしれません。科学的にどのような意味があるのか、その解明が楽しみです。
一方、自転軸がこの画像でほぼ垂直方向に近いということは、到着して早い段階にリュウグウのほぼ全貌がわかるというメリットがあります。プロジェクトとしては、計画が立てやすくなります。ただし、着陸できる場所がリュウグウの赤道付近に限定される可能性があるので、「はやぶさ2」の降下や、小型着陸機と小型ローバーを着陸させる場所として、適切な場所が見つかることを期待しています。
20日午後の時点で「はやぶさ2」からリュウグウまでの距離は約100kmとなっている。到着予定は27日前後だ。
〈参照〉
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