火星に水の流れた痕? 探査機「マーズ・エクスプレス」の最新画像
【2012年5月8日 ヨーロッパ宇宙機関】
ヨーロッパの探査機「マーズ・エクスプレス」が、火星の平原と高地の境界域に水の流れで作られたらしい地形をとらえた。かつて火星の地表に水が豊富に存在した時期があったことを示す新たな証拠となる。
2011年6月、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「マーズ・エクスプレス」は、火星の北半球にあるアキダリア平原の西の端付近を高解像度カメラで撮影した。この平原の名前はギリシア神話の女神達が沐浴したアキダリアの泉が由来で、19世紀に火星を観測したジョヴァンニ・スキアパレッリが命名したものだ。アマチュア天体観測家でも観察できるほど広大な地形である。
平原の西の縁をとらえた撮影画像(画像2枚目)には、そばにある小高い「テンペ・テラ」から降りてくるように伸びる枝状の谷が多数見られる。これは、はるか昔に雨または溶けた雪が流れた痕と考えられる。深い谷からはさらに下流まで伸びるような細かい支脈はほとんど見られず、断崖の底の柔らかい地層が削られて上にあった岩が崩れ落ちるというプロセスで形成された地形であることがうかがえる。このようなプロセスでは、谷が徐々に高地の方に向かって伸びていく。アメリカのコロラド高原などと同様である。
画像の左下部分は暗く影のようになっているが、これは表面物の違いによるものだ。暗い部分はおそらく火山性の砂、それ以外の部分は明るい塵だという。
また、画像中に見える地殻の断層は、地下に貯蔵されていた水分が外に出ていく過程に深く関わっていると考えられ、周辺のクレーターに湖を形成した可能性もある。
年代が古く形の崩れたクレーターの底面をおおう堆積物は、かつて地表に水が存在していたことを示唆する意義深いものだ。また、クレーターの縁から谷が形成されているものもあり、これをつたって水が周囲に流れだしたと考えられる。
これらの画像は、火星にかつて水が存在したという新たな証拠となる。さらに、時代ごとにどのように水が流れ、地形を変えていったのかを解き明かす材料となる。