すばるとハッブルがとらえたアイソン彗星
【2013年10月23日 すばる望遠鏡/HubbleSite】
太陽に接近中のアイソン彗星を、すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡がとらえた。その光や形状の分析から、天文学者たちはアイソン彗星の今後や太陽系の謎に迫ろうとしている。
太陽からの距離が2億kmを切り、じょじょに明るさを増してきたアイソン彗星(C/2012 S1)に、地上の大型望遠鏡や宇宙望遠鏡が観測の目を向けている。
画像1枚目は、米ハワイにあるすばる望遠鏡が10月19日と21日に撮影したアイソン彗星の姿だ。地球から約2.3億kmの距離にあった彗星を、1μm以下の塵の分布を示す「中間赤外線」という光で観測したもので、太陽の光に押された塵がたなびく尾を形成しているのが見てとれる。
今回の観測では分光スペクトルのデータ(光の波長ごとのデータ)も取得されており、研究チームではその詳細な解析から塵の材質や量を調べ、この彗星の起源と太陽系の成り立ちに迫る予定だ。
ハッブル宇宙望遠鏡も、10月9日に3度目のアイソン彗星撮影を行っている(画像2枚目)。尾が赤っぽく見えるのは塵の反射によるものだ。一方で彗星核をとりまくコマはガスが多く、青っぽく見えている。
アイソン彗星のように太陽系中心部に初めてやってくる彗星は、発見当初に特に明るく、その後近づいてきたときには予測を裏切ることがままある。その理由として、(1)太陽系の果てで銀河宇宙線にさらされ脆くなっているために、まだそれほど太陽に近づいていないうちに活発になる(2)一酸化炭素のアウトバーストによるもの(ハワイ大学のKaren Meechさん)といった説があるが、はっきりとはわからない。
火星軌道の内側まで入ってきたアイソンも増光ペースが鈍いままで、「すでに崩壊しているのでは」との声すら聞かれたが、少なくともこの画像に見られるコマの滑らかな形状から、核が分裂していないことはわかる。
むしろこの画像はよい兆候でもある。コマの対称的な姿から、物質の放出が局地的なジェットではなく、太陽に面している側全体から広がっているとみられる。となると、あまり自転しておらず、ずっと「日の目を見ていない」面もあるかもしれない。近日点通過の際にこうした場所に初めて日光が当たることで、予想外に活発な活動を見せる可能性もあるのだ。
高い前評判ゆえに過小評価も聞かれがちだが、ともかくも無事太陽のそばを通過して、12月の明け方の空に輝いてほしいものだ。
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(※販売終了)