全球を覆いつくせる火星の氷河の氷

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火星の氷といえば極冠の存在がよく知られているが、南北両半球の中緯度にも帯状に伸びる氷河が存在する。最新の研究で、そこに含まれる水の氷の量は火星全球を1m以上の厚さで覆いつくすほどであることが示された。

【2015年4月9日 Phys.Org

火星には中緯度に氷河が存在している。その形は火星上空を周回している複数の探査機で観測できるが、凍っている物質が水なのか二酸化炭素なのか、あるいは泥なのかは長い間わかっていなかった。

厚い塵の層に覆われたこの氷河の氷が水であるとわかったのは、NASAの火星探査機「マーズ・リコナサンス・オービター」によるレーダー観測だ。しかし、厚みがどれほどなのか、地球の氷河に似ているのかなどは、不明なままであった。

火星の南北両半球の中緯度に帯状に伸びる氷河(水色の点)
火星の南北両半球の中緯度に帯状に伸びる氷河(水色の点)。水色の線は緯度30度と50度を表す(提供:Mars Digital Image Model, NASA/J. Levy/Nanna B. Karlsson)

その疑問に挑んだのはデンマーク・コペンハーゲン大学のニールス・ボーア研究所のチームだ。「わたしたちはレーダー観測のデータを10年遡り、氷の厚みやその動きを調べました。その結果、氷河は巨大な氷の塊で、流れていることがわかりました」(ニールス・ボーア研究所のNanna B. Karlssonさん)。

Karlssonさんらはさらに、高解像度の詳細な観測データなどを用いて氷河の形や流れに関する情報を集め、氷の厚みや体積を計算した。「氷の体積は1500億m3以上で、火星全球を1.1mの厚みの氷で覆いつくせるほどです。火星の中緯度に存在する氷は、火星における重要な貯水場と言えるでしょう」(Karlssonさん)。

火星の気圧はとても低く、そのため水の氷は簡単に蒸発して水蒸気となってしまう。氷が宇宙空間へと蒸発してしまわずに済んだのは、厚い塵の層に守られたおかげなのだろう。

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