火星で「水がなくなった」証拠を発見
【2012年10月31日 NASA】
1か月前に「水が流れた痕」を見つけた火星探査車「キュリオシティ」が17日、今度は水が枯渇した時期の玄武岩質サンプルの分析を行った。かつて火星の環境がどのように変化したか、その推測を裏付けるものとなっている。
NASAの火星探査車「キュリオシティ」は、スコップですくった土壌サンプルから150μm(髪の毛程度)より大きな粒子を取り除き、化学鉱物分析装置「CheMin」で分析を行った。X線回折分析と呼ばれるこの手法は地球でも石油やガスの探査に使われているが、火星探査で実施されるのは初めてだ。
ダイヤモンドと黒鉛のように、化学組成が同じでも鉱物組成が異なると物質は違った構造や特徴を見せる。それを調べることで物質がどのような条件で形成されたかがわかり、過去の火星環境を知る手がかりとなる。
火星には数十億年前に水が豊富な時期があったとされており、約1か月前には当時水が流れた跡とみられる礫岩が見つかっている(参考:2012/10/01「火星探査車が見つけた丸い小石」)。今回のサンプルはそれよりずっと後、火星が水を失い乾燥していく移行期のものと目されている。
CheMin研究員のDavid Bishさんは分析結果について、「火星の大部分を覆う塵の鉱物組成について、これまで完全にはわかっていませんでした。今回の調査で、予測どおり長石、輝石、かんらん石を豊富に含む玄武岩と同質のものであることがわかりました。サンプルのほぼ半分が、火山ガラスや風化したガラスなどの非結晶物質でした」とコメントしている。
「古い礫岩は水の流れた跡を見せ、もっと新しい土壌の鉱物は水の少ない環境を示唆する。これらの分析結果は、ゲール・クレーターが火星が乾燥化していく移行期の名残をとどめているとする私たちの推測と一致しています」。
探査開始からまだ1か月余り。「キュリオシティ」の活躍で、赤い惑星の歴史が今後さらに明らかになりそうだ。