土星大気の水はエンケラドスから
【2011年7月28日 ヨーロッパ宇宙機関】
赤外線天文衛星「ハーシェル」の観測から、土星の衛星エンケラドスが噴き出す水が巨大な水蒸気のリングとなって土星をとりまいている様子がわかった。土星の上層大気に存在する水の由来とみられる。
14年前の1997年、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線宇宙望遠鏡が、土星の上層大気に水が存在していることを発見した。土星大気の深層部に水蒸気が含まれることはわかっているが、上層大気に存在する水がどこから来るのかはわかっていなかった。
今回、赤外線天文衛星「ハーシェル」を用いて土星を観測したところ、衛星エンケラドスから放出された水が、その公転軌道付近で水蒸気の巨大リングとなって土星をとりまいている様子がわかった。土星の上層大気の水はここから来たもののようだ。
エンケラドスは、太陽系の中で唯一、地球外で液体の水が存在していることが確認されている天体であり、南極のタイガーストライプと呼ばれる領域から毎秒250kgもの水を時折間欠泉のように噴き出している様子が土星探査機「カッシーニ」によって観測されている。
ハーシェルの観測をもとにシミュレーションしたところ、エンケラドスから噴出した水のうち3〜5%が土星に降り注ぐようだ。この量で、土星の上層大気で観測される水分量とつじつまが合うという。また、このような現象は、二酸化炭素のような酸素を含むもののもととなる可能性もある。
上層大気の水分はやがて下層に落ち濃縮されるものの、あまりに少量で雲ができるほどではないとみられる。
地球では、月や宇宙空間から定期的に水が運ばれてきて大気の成分となっているようなことはないので、今回見つかったのは土星特有の現象と言えそうだ。