欧・露の探査ミッション「エクソマーズ」が火星に向け出発
【2016年3月15日 ヨーロッパ宇宙機関】
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)とロシア・ロスコスモスによるエクソマーズ(ExoMars)計画は、今回打ち上げられた微量ガス周回探査機(Trace Gas Orbiter; TGO)と着陸実証機「スキアパレッリ」、そして2018年打ち上げ予定の探査車の3つで構成されている。計画の目的は、火星の大気を調べ、現在火星で地質学的、生物学的な活動が起こっているかどうかを調べることにある。
TGOとスキアパレッリを搭載したプロトンMロケットは日本時間14日午後6時31分に打ち上げられた。通信の確立や太陽光発電ウィングの展開などを経て、2機は7か月に及ぶ火星への旅をスタートした。
「ミッションが最高のスタートを切ることができ、ロシアというパートナーに感謝します。これからわたしたちは共に火星探査を行っていきます」(ESA Johann-Dietrich Woernerさん)。「偉大な成果を得るためには“協力”というプロセスが欠かせません」(ロシア・ロスコスモス Igor Komarovさん)。
両機はしばらく一緒に旅をして、10月16日に火星から90万kmの位置で分離する。その後、10月19日にスキアパレッリは6分未満で火星の大気に突入し、表面へと下降する。スキアパレッリは将来のミッションに向けて、大気突入、下降、そして着陸技術の実証を行う。また、短期間ではあるが、火星の表面で環境を調査する予定だ。たとえば、火星の表面で初となる電場計測を行い、塵の濃度計測の結果と合わせて、火星の砂嵐を引き起こす塵上昇に対する電場の影響を探る。
一方、同じ日にTGOは、4日間で火星を一周する楕円軌道(TGO・火星間の距離は約300kmから9万6000km)に入る。その後、1年かけてゆっくり高度を下げ、最終的には高度400kmの円軌道に入り、大気中の希薄なガスの分析を開始する。
中でもとくに興味深いのはメタンである。地球上でメタンは、地質学的な活動や生物学的なプロセスが起こっている証拠だからだ。ミッションが目指す重要なゴールは、ESAの火星探査機「マーズエクスプレス」が2004年に検出したメタンの追跡調査である。エクソマーズ・ミッションでは従来と比べて正確性が3桁も向上しており、メタンの発生と崩壊に関するプロセスが調べられる。
またTGOは、微量ガスに関係があるかもしれない火山など火星表面の撮影も行う。さらに、地下に埋もれている堆積した水の氷も検出することができる。水の氷に関する情報と微量ガスの発生位置を特定することは、将来のミッションの着陸地点の選択にも役立つ。
エクソマーズ・ミッションでは、2018年5月にミッション第2弾として探査車などを打ち上げる予定だ。火星到着は2019年初めで、TGOは探査車のためのデータ中継役も担うことになっている。
「わたしたちは今回のミッションで科学的データが得られることを楽しみにしているだけではありません。第2のエクソマーズ・ミッションへの道を拓くためにも、今回が重要なのです。第2弾では、火星を周回する軌道上からの探査から、表面や地表下の土壌や岩石を調べる探査を行います」(ESA Alvaro Gimenezさん)。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ宇宙機関: http://www.esa.int/ESA
- ロスコスモス: http://www.roscosmos.ru/
- アストロアーツ:
- 投稿画像ギャラリー: 2016年 火星
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
〈関連ニュース〉
- 2015/11/10 - メイブンが解明した、太陽風による火星大気のはぎ取り
- 2015/09/29 - 現在の火星に液体の水が流れている強力な証拠
- 2015/04/16 - 火星の表面近くに液体の塩水の可能性
- 2015/04/09 - 全球を覆いつくせる火星の氷河の氷
- 2015/03/25 - 火星のサンプルから、生命活動に重要な硝酸塩の証拠
- 2015/03/20 - クリスマスに現われた火星のオーロラ
- 2015/03/06 - かつて火星には広大な海があった
- 2014/12/24 - 火星の地下に水素の貯蔵層が存在
- 2014/12/17 - 火星で一時的に急増したメタンと有機分子の発見
- 2014/12/10 - 火星のクレーターをかつて満たした湖
- 2014/09/22 - 探査機「メイブン」が火星到着 上層大気を調査
- 2014/09/12 - 火星探査車「キュリオシティ」、シャープ山のふもとに到着
- 2014/07/16 - キュリオシティが見る火星の鉄隕石「レバノン」
- 2014/05/22 - 火星で棲息できる地球上生物、メタン菌
- 2014/04/16 - 火星誕生から4億年で水が半減
- 2014/04/09 - 6km走破のキュリオシティ、大規模調査の予定地点に到着
- 2014/02/12 - 液体の水を示す証拠? 火星の黒い筋模様
- 2014/02/04 - この道行けるかな? キュリオシティが見る火星の風景
関連記事
- 2024/10/22 【特集】火星(2025年1月12日 地球最接近)
- 2024/10/17 2024年10月23日 月と火星が接近
- 2024/10/03 火星の地震波が示す、液体の水が地下に存在する可能性
- 2024/10/03 「火星のクレーター」を教室に再現!ドラマ「宙わたる教室」が10月放送開始
- 2024/09/25 太古の火星でホルムアルデヒドが有機物生成に寄与
- 2024/08/07 2024年8月中旬 火星と木星が大接近
- 2024/07/24 火星大気中の塩化水素を全球で検出
- 2024/07/11 2024年7月下旬 火星とプレアデス星団が接近
- 2024/07/08 2024年7月中旬 火星と天王星が大接近
- 2024/06/25 2024年7月2日 細い月と火星が接近
- 2024/06/17 火星の赤道地方の山頂で霜を検出
- 2024/05/27 2024年6月3日 細い月と火星が大接近
- 2024/05/17 初期火星の有機物は一酸化炭素から作られた
- 2024/04/24 2024年5月5日 火星食
- 2024/04/24 2024年5月5日 細い月と火星が接近
- 2024/04/19 2024年4月下旬 火星と海王星が大接近
- 2024/04/04 2024年4月中旬 火星と土星が大接近
- 2024/02/15 2024年2月下旬 金星と火星が大接近
- 2024/01/19 2024年1月下旬 水星と火星が大接近
- 2023/08/14 火星の自転はわずかに加速している