「はやぶさ2」地球帰還まであと3.8億km

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小惑星探査機「はやぶさ2」の第2次イオンエンジン運転で、地球帰還に必要な運転ノルマの約4割を達成したことが報告された。

【2020年6月15日 JAXA】

今年11~12月の地球帰還を予定している小惑星探査機「はやぶさ2」は、地球を目指して5月12日から最後のイオンエンジン運転を行っている。6月11日現在で、地球に帰るために必要な速度変更のノルマを約4割達成できていて、飛行は順調だ。

現在「はやぶさ2」は地球から約1.3億kmの位置にいて、昨年11月に出発した小惑星リュウグウからは264万km(=地球から月までの距離の約7倍)ほど離れた。これまでの総飛行距離は48.6億kmに達している。地球帰還まで、残す道のりはあと3.8億kmほどだ。

地球帰還まで
「はやぶさ2」の地球帰還までの軌道。2019年11月13日にリュウグウを出発し、同年11月20日~2020年2月20日の間に第1次イオンエンジン運転(進行方向に対して減速する向きでの噴射)が行われた。5月12日から9月末までは第2期イオンエンジン運転が行われる。この運転は進行方向に対して加速する向きで行われ、最終的に11~12月に地球に帰還する軌道に乗る(提供:JAXA、以下同)

予定では、現在の「第2次イオンエンジン運転」を8月末まで行い、必要な速度変更量のノルマを達成する。ここでいったん運転を止めて軌道を精密に計測した後、最後に1週間程度イオンエンジンを噴射して軌道の微調整をするという。これによって、「はやぶさ2」は地球の中心から半径1万km(=地球半径の約1.5倍)の円内を通過できる軌道に乗る。ここまでの作業を9月いっぱいまでに終わらせ、残りの微調整は化学エンジン(スラスター)で行われる。

イオンエンジンによる軌道変更
「はやぶさ2」の飛行経路。第1次イオンエンジン運転によって、「はやぶさ2」は地球から半径140万km以内の範囲に戻れる軌道に移った。現在行われている第2次イオンエンジン運転で地球から半径1万km以内に戻れる軌道に乗り、最後は化学エンジンによる軌道の最終調整を行い、カプセルを分離してオーストラリアに着地させる

現在の見通しでは、11~12月に地球に帰還し、リュウグウから採取したサンプルを入れたカプセルを分離した時点で、「はやぶさ2」のイオンエンジンの燃料は約55%残るとみられている。また、イオンエンジン自体も、1万4000時間の設計寿命に対して帰還までの累積の運転時間は7000~8000時間ほどであり、地上試験ではすでに6万時間以上の運転も達成していることから、まだまだ使える見込みだ。地球帰還後の「はやぶさ2」は地球の大気圏には突入しないため、別の天体に向かう延長ミッションが検討されている。

はやぶさ2
「はやぶさ2」のイラスト。復路の第1次運転では図のようにはじめ3台のエンジンで噴射が行われ、太陽から遠ざかって太陽電池の発電量が下がるとともに、2台運転・1台運転に切り替えられた。現在の第2次運転も1台で行われており、8月からは2台運転に切り替えられる見込みだ

「はやぶさ2」プロジェクト・ミッションマネージャの吉川真さんによると、ミッションの延長を考える上で重要なのは、地球に帰還する際の探査機の熱制御だという。帰還時には「はやぶさ2」は地球の公転軌道よりも内側に入るため、これまでの飛行中で最も強く太陽熱を受けることになる。これに十分耐えられるかどうかを計算などで見極めた上で、延長ミッションで向かう天体を絞り込むということだ。

残りの燃料を考えると、次に向かうことができる天体は火星軌道より内側の範囲にあるものにほぼ限られる。プロジェクトチームでは、できれば単なるフライバイ(天体のそばを通過しながら観測を行う探査)ではなくランデブー(天体と速度を合わせ、天体の近傍に長時間滞在する探査)を行いたいと考えているという。

(文:中野太郎)

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