「はやぶさ2」地球まで4000万km、カプセル着陸も許可

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「はやぶさ2」の地球帰還に向けたイオンエンジン運転がほぼ完了した。カプセルのオーストラリア着陸も正式に許可された。

【2020年9月10日 JAXAはやぶさ2プロジェクト

JAXA宇宙科学研究所の小惑星探査機「はやぶさ2」は、2019年2月と7月に小惑星リュウグウに着陸して表面のサンプルを採取し、同年11月にリュウグウを出発した。9月9日現在、地球から約4000万kmの距離にいる。

「はやぶさ2」は地球に帰還するための「第2期イオンエンジン運転」を今年5月から続けてきたが、この運転が8月28日に終了した。現在は探査機の軌道を精密に決定する作業が行われていて、9月15~21日にはイオンエンジンを使った最後の軌道修正(TCM-0)が行われる予定だ。

10月からは、リュウグウのサンプルを納めたカプセルをオーストラリアに着陸させるため、「はやぶさ2」を最終誘導する段階に入る。ここでは軌道修正は5回(TCM-1~TCM-5)予定されていて、いずれも化学エンジン(スラスター)の噴射で軌道変更が行われる。

最終誘導の運用計画
「はやぶさ2」のカプセル着陸に向けた最終誘導の運用計画。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)

10月下旬のTCM-1と11月上旬のTCM-2によって、「はやぶさ2」は地球から高度200km以上離れた位置をスイングバイする軌道に乗る。続いて、11月下旬と12月初めに予定されているTCM-3, 4で、最終的にカプセルが大気圏に再突入してオーストラリアのウーメラ砂漠に着陸できる軌道に入る。カプセルの分離が行われるのは12月5日の午後2~3時(日本時間、以下同)だ。この時点で「はやぶさ2」は地球から約22万kmの距離(月までの距離の6割ほど)にいる。

カプセル分離
カプセルを分離する「はやぶさ2」のCG(提供:JAXA「はやぶさ2」地球帰還動画より、以下同)

カプセルを分離した「はやぶさ2」は、同日午後3~5時に最後のスラスター噴射(TCM-5)を行う。このTCM-5は、「はやぶさ2」に12基搭載されているスラスターのうち4基を30秒間×3回噴射するという「全速力」での軌道変更だ。これによって「はやぶさ2」は、地球大気圏に再突入する軌道から脱して、地球の重力圏を離れる。カプセルがオーストラリアに着地するのは、分離から12時間後の12月6日午前2~3時ごろの予定だ。

TCM-5
最後の軌道修正「TCM-5」で、スラスターを噴射して地球圏を離脱する「はやぶさ2」のCG

9月2日の記者説明会では、TCM-5で「はやぶさ2」が地球圏を離脱する軌道に乗った後、探査機の姿勢を変え、大気圏内で発光するカプセルの様子を撮影する計画が発表された。撮影は探査機の側面に搭載されている広角の光学航法カメラ「ONC-W2」で行われる。

カプセル撮影
広角の光学航法カメラONC-W2で、大気圏に突入するカプセル(中央)を撮影する「はやぶさ2」のCG

「はやぶさ2」の燃料にはまだ余裕があるため、地球を離れた「はやぶさ2」はさらに別の小惑星の探査に向かうことが現在計画されている。探査目標の候補として、2つの小惑星「2001 AV43」と「1998 KY26」が選ばれていて、このどちらかを目指すことになる(参照:「「はやぶさ2」、拡張ミッションで小型高速自転小惑星へ」)。どちらに向かうかは、12月5日のカプセル分離までに決定される見込みだ。

8月6日には、オーストラリア政府から正式に、「はやぶさ2」のカプセルを同国の「ウーメラ立入制限区域」に着陸させる許可が発行された。運用チームは引き続き、カプセルの回収と日本への輸送に必要な手続きや準備を進めている。

ただし、オーストラリア政府は現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、同国民と永住者およびその家族以外の外国人については、一部の例外を除いてオーストラリアへの入国を禁止している。「はやぶさ2」プロジェクト関係者以外の一般の人々が、オーストラリアに渡航してカプセルの着陸を現地で観望するのは、今の状況のままではきわめて難しいだろう。

「はやぶさ2」プロジェクトwebサイトでは、探査機の最終誘導からカプセル着地までをCGでリアルに描いた動画も公開されている。

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