「はやぶさ2」大気圏再突入コースに軌道変更完了
【2020年12月1日 JAXA はやぶさ2プロジェクト】
「はやぶさ2」は12月1日現在、地球から約190万km(月までの距離の5倍)の距離まで近づいている。「はやぶさ2」運用チームは、11月26日の16~17時(日本時間、以下同)にかけて、地球から約350万kmの位置で3回目の最終軌道修正「TCM-3」を行い、予定通りの軌道修正を完了した。この軌道変更によって、「はやぶさ2」は地球上空の高度290kmを通過する軌道から、オーストラリアのウーメラ管理区域(WPA)上空で大気圏再突入する軌道へと移った。
小惑星リュウグウのサンプルを納めた再突入カプセルをWPAの区域内に正しく着地させるためには、「再突入回廊」と呼ばれる決まった範囲の進入角度で「はやぶさ2」を地球に進入させる必要がある。そのためにTCM-3では、地球から350万km離れた位置からWPAの上空200kmに置いた半径10kmの円を通すという、きわめて精密な軌道修正が求められた。今回、運用チームは無事に再突入回廊へと「はやぶさ2」のコースを変更することに成功し、再突入カプセルはWPA内の長径約230km×短径約100kmの楕円形の範囲内に着地することが確実となった。
TCM-3を予定通り完了したことで、カプセル着地までの各イベントの時刻も詳しく決まった。12月1日には再突入に向けた最後の軌道修正「TCM-4」が行われ、これによってカプセルの着地点は、WPA内の長径約150kmの楕円エリア内に絞られた。12月5日14時30分にはカプセルが「はやぶさ2」本体から分離される。カプセルは12月6日2時28分ごろに大気圏に突入し、2時47~57分ごろに着地する見込みだ。
イベント | 時刻(日本時間) | 地球からの距離 |
---|---|---|
TCM-4 | 12/1 16時前後 | 174万km |
カプセル分離 | 12/5 14:30 | 22万km |
TCM-5 | 12/5 15:30-18:00 | 20万~16万km |
探査機が日陰に入る | 12/6 01:57 | 12,000km |
カプセル撮影 | 12/6 02:28-02:30 | 700~300km |
カプセル大気圏突入 | 12/6 02:28-02:29 | 120km |
探査機が日陰から出る | 12/6 02:31 | 350km |
パラシュート展開 | 12/6 02:31-02:33 | 11~7km |
カプセル着地 | 12/6 02:47-02:57 | 0km |
一方、「はやぶさ2」本体はカプセルを分離してから1時間後に軌道修正「TCM-5」を行う。これによって「はやぶさ2」は再突入回廊から外れ、地球圏から離れる軌道に乗る。カプセルが大気圏に再突入して火球となる時刻には、「はやぶさ2」のカメラから火球の撮影が行われる予定だ。
現在、WPAではJAXAのカプセル回収班本隊も到着し、回収に必要なアンテナやマリンレーダーなどが設置されたところだ。現地でカプセルを分解してサンプルコンテナを取り出す「QLF(初期観察施設)」も設営が完了している。12月1~2日にはヘリコプターを使った回収のリハーサルが行わることになっている。
〈参照〉
- JAXAはやぶさ2プロジェクト:小惑星探査機「はやぶさ2」記者説明会 2020年11月30日
〈関連リンク〉
関連記事
- 2024/09/25 「はやぶさ2」が次に訪れる小惑星に「トリフネ」と命名
- 2024/09/12 「にがり」成分からわかった、リュウグウ母天体の鉱物と水の歴史
- 2024/08/09 「はやぶさ2」が次に訪れる小惑星は細長いかも
- 2024/07/18 リュウグウ試料から生命の材料分子を80種以上発見
- 2024/05/09 リュウグウの試料中に、初期太陽系の磁場を記録できる新組織を発見
- 2024/01/29 リュウグウに彗星の塵が衝突した痕跡を発見
- 2023/12/25 タンパク質構成アミノ酸が一部の天体グループだけに豊富に存在する理由
- 2023/12/15 リュウグウの岩石試料が始原的な隕石より黒いわけ
- 2023/12/13 「はやぶさ2♯」の目標天体2001 CC21命名キャンペーン
- 2023/12/07 リュウグウ試料が示す、生命材料の輸送経路
- 2023/11/15 リュウグウ試料に水循環で生じたクロム同位体不均質が存在
- 2023/10/03 リュウグウの見え方が宇宙と実験室で違う理由
- 2023/09/21 リュウグウ試料から始原的な塩と有機硫黄分子群を発見
- 2023/08/29 「はやぶさ2」の旅路から得られた、惑星間塵の分布情報
- 2023/07/26 「はやぶさ2」が次に目指す小惑星、イトカワと類似
- 2023/07/19 リュウグウの炭酸塩に、母天体が独特な環境で進化した形跡
- 2023/04/25 リュウグウ粒子に残る、穏やかな天体衝突の記録
- 2023/04/13 「はやぶさ2♯」探査目標の小惑星による恒星食、1地点で減光を観測
- 2023/04/06 リュウグウでアミノ酸が生成された痕跡
- 2023/03/29 小惑星リュウグウに核酸塩基とビタミンが存在、過去には水による変性も