「はやぶさ2」カプセルの残る2室も開封、1cm大の粒子を確認

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「はやぶさ2」カプセルのサンプル容器の開封作業が行われ、第2回着陸時のサンプルを納めた「C室」にも直径1cmに達する黒い粒子が多数入っていることが確認された。

【2020年12月28日 JAXAはやぶさ2プロジェクト

12月6日にオーストラリアに着地した「はやぶさ2」の再突入カプセルは、JAXA相模原キャンパス内の「キュレーション施設」に運び込まれ、小惑星リュウグウのサンプルが入っている「サンプルキャッチャー」の開封作業が行われている。

サンプルキャッチャーにはA, B, C室の3室があり、2019年2月の第1回タッチダウンで採取されたサンプルがA室に、人工クレーター生成後の2019年7月に行われた第2回タッチダウンで採取されたサンプルがC室に納められている。B室はサンプル採取には使われていないが、2回のタッチダウンの間にB室の入口が開いていた期間があるため、B室にも何らかの物質が入っている可能性がある。

12月15日にはA室が開封され、直径が最大数mmに達する黒い粒子が多数入っていることが確認されている(参照:「大成功!「はやぶさ2」によるリュウグウのサンプルリターン」)。キャッチャーの重量を測定した結果から、キャッチャーの中には3室合わせて5.4gのサンプルが入っていると推定されている。

A室内部
サンプルキャッチャーのA室を開封したところ。黒い粒子がたくさん入っている。キャッチャーの内径は48mm(提供:JAXA)

12月24日の記者説明会では、さらにB・C室が開封され、A室とC室の物質が回収容器に移されて光学顕微鏡による観察が始まったことが報告された。C室にも黒っぽい粒子が多数入っており、最大で直径約1cmに達するサイズのものもあるようだ。

サンプルコンテナの内部
回収容器に移した後のA室サンプル(左)・C室サンプル(右)を撮影した光学顕微鏡画像。赤い線は5mmのスケールを表す。C室のサンプルの方が粒子サイズが大きい。右の画像の左上に写っている銀色のものがアルミシートと思われる人工物。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)

当初はサンプルがインスタントコーヒーの粒子のようにかなりもろい可能性も考えられていたが、これまでの拾い上げ作業や回収容器への移し替えをした限りでは、粒子は比較的硬く、そのおかげで作業は順調に進んでいるという。

A室とC室の物質を比べると、C室の物質の方が大きな粒子が多い。この違いについて、キュレーション作業を統括している「はやぶさ2」プロジェクトチーム統合サイエンスチームの臼井寛裕さんは「第2回タッチダウンの着地点の方が岩盤が硬かったために大きな破片が多くなったということも可能性の一つとして考えられる」と述べている。

また、C室の試料の中に金属光沢のある人工物のようなものがあることも確認された。この正体は調査中だが、試料採取の際にサンプラーホーン内に撃ち込まれる弾丸の入口をふさいでおくアルミニウムシートの破片ではないかと推定されている。

さらに、タッチダウンで使われていないB室についても、内部に粒子のようなものが肉眼で多く確認できるという。B室の詳しい調査は来年になる見込みだ。

再び地球から遠ざかりつつある「はやぶさ2」が今後の「拡張ミッション」で目指す小惑星「1998 KY26」の地上観測画像も公開された。1998 KY26はちょうど衝の時期を迎えており、12月10~15日の間に米・ハワイのすばる望遠鏡やチリのVLT、スペイン領カナリア諸島のGTCなどの大望遠鏡で観測が行われ、25~26等級の姿がとらえられた(参照:「すばる望遠鏡、「はやぶさ2」の次の目標天体を撮影」)。これらの観測により、観測データが少ないこの天体の軌道をより高精度のものに改良することができ、拡張ミッションの軌道計画に役立てられるという。

1998 KY26
1998 KY26の観測画像。左がすばる望遠鏡(2020年12月10日)、中央がVLT(2020年12月10日)、右がGTC(2020年12月15日)で撮影されたもの。画像クリックで表示拡大(提供:記者説明会資料より。画像クレジット:国立天文台/ESO/ESA NEOCC/M. Popescu (Astronomical Institute of the Romanian Academy) /GTC/IAC)

【録画】小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(20/12/24)

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