矮小銀河からガンマ線、ダークマター粒子対消滅の証拠の可能性
【2015年3月13日 Brown University】
レチクル座2(Reticulum 2)は数週間前に発見されたばかりの、天の川銀河の周りを回る矮小銀河だ。太陽系から9万8000光年彼方に位置し(大小マゼラン雲よりも近い)、天の川銀河に最も近い銀河の1つである。
米・カーネギーメロン大学などの研究者がレチクル座2の観測データを分析したところ、ガンマ線が放射されているらしいことがわかった。その時点では起源ははっきりしていなかったが、その後同大学のAlex Geringer-SamethさんとMatthew Walkerさん、米・ブラウン大学のSavvas Koushiappasさんの3人によって、銀河の方向から通常予測される量以上のガンマ線が放射されているという証拠が得られた。
「ダークマターを探すにあたり、矮小銀河からのガンマ線は、強力な証拠の1つと長い間考えられてきました。どうやら私たちは初めてその証拠を検出したようです」(Koushiappasさん)。
ダークマターの正体はいまだわかっていないが、その存在は銀河の回転や宇宙背景放射のゆらぎから明らかになっており、この宇宙に存在する物質の約80%を占めていると考えられている。
「ダークマターを重力的に検出しても、その粒子としてのふるまいについては、ほとんど何もわかりません。私たちは今回、“ダークマターが粒子としてふるまう”ことを示す、重力によらない検出ができたかもしれないのです」(Walkerさん)。
ほとんど相互作用を起こさない粒子「WIMP」は、ダークマター候補の1つだ。WIMPのペアが出会うと対消滅して高エネルギーのガンマ線が放射されるので、銀河の中心のようにWIMPが大量にあると考えられる場所からは多くのガンマ線放射が見られると考えられる。
宇宙にはブラックホールやパルサーなど高エネルギーを放射する天体が他にも多く存在するため、WIMPからのガンマ線と区別するのが難しい。その点、矮小銀河にはWIMP以外のガンマ線発生源が存在しないと考えられているので区別しやすい。矮小銀河はダークマターの粒子探しにおいて重要な天体ということだ。今後レチクル座2を詳しく調べることで、隠れたガンマ線源の正体が明らかにされるかもしれない。
〈参照〉
- Brown University: Detection of gamma rays from a newly discovered dwarf galaxy may point to dark matter
- arxiv.org: Evidence for Gamma-ray Emission from the Newly Discovered Dwarf Galaxy Reticulum 2 論文
〈関連リンク〉
- The Dark Energy Survey: http://www.darkenergysurvey.org/
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