太陽最接近前に活動停止していたアイソン彗星

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【2014年7月23日 ヨーロッパ宇宙機関

2013年11月、大彗星になると期待されながら消滅したアイソン彗星。太陽最接近時刻のわずか半時間前にとらえられた紫外線像から、彗星が近日点通過前に活動を停止していたようすが明らかになった。


遠紫外線で撮影されたアイソン彗星

121.6nmの遠紫外線で撮影されたアイソン彗星の尾。左上の赤い十字が、彗星核があったはずの位置。クリックで拡大(提供:MPS)

2013年11月28日(世界時、以下同)に太陽に最接近して消滅したアイソン彗星(C/2012 S1)の最期のようすが、太陽観測衛星「SOHO」の紫外線観測で明らかになった。

SOHOはLASCOカメラでもアイソン彗星をとらえていたが、近日点通過時刻(18時半ごろ)のおよそ1時間前に彗星が遮光板の陰に入ったため、これ以降の彗星の姿は紫外線観測装置(SUMER)のみがとらえている。本来は太陽の外層大気のプラズマの流れや温度、密度を調べる装置だが、太陽の紫外線が照らす彗星の塵の粒子を見たのだ。

画像は、最接近時刻のおよそ半時間前、11月28日17時56分から5分間にわたってとらえられたアイソン彗星だ。24万km以上に伸びた、とがった矢のような形の尾が見えるが、彗星核があるはずの位置(画像左上)には何もない。18時2分以降の10分おきに取得したデータでも、彗星からのプラズマガスは見られなかった。

マックス・プランク研究所のチームでは、粒子のサイズや放出時刻、スピードを仮定したコンピュータシミュレーションを行い、この尾の形状の再現を試みた。その結果得られたシナリオは、SUMERの観測時点で、彗星はすでに活動を停止していたというものだった。シミュレーションでは、近日点通過の8.5時間前に彗星核が最後の崩壊を起こし、アウトバーストにより1万t以上の塵が放出された。尾の形状はそれが原因のようだ。そしてその数時間後、彗星は完全に活動を停止したとみられる。

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