火星のサンプルから、生命活動に重要な硝酸塩の証拠
【2015年3月25日 Phys.Org】
火星探査車「キュリオシティ」が着陸地近辺で採取したサンプルから、硝酸塩の証拠が見つかった。ロックネスト(Rocknest)と呼ばれる場所で風成堆積物を、ジョンクライン(John Klein)とカンバーランド(Cumberland)という場所では泥岩の堆積物を採取し、分析器で加熱して発生した気体を分析したところ、酸化窒素が検出されたのだ。
「硝酸塩を熱すると分解して酸化窒素ができることが地上での実験で知られています。この酸化窒素は硝酸塩由来と考えられます」(NASAゴダード宇宙飛行センターのJennifer Sternさん)。
「キュリオシティ」本体による汚染を差し引くと、酸化窒素の由来になる硝酸塩はロックネストのサンプルで110~300ppm、ジョン・クラインのものは70~260ppm、カンバーランドにいたっては330~1100ppmに相当する高い含有率となった。
硝酸塩に含まれる窒素は、アミノ酸や核酸塩基を構成する、生命にとって重要な成分だ。2つの窒素原子が固く結びついた大気中の窒素分子は分離が困難だが、窒素原子が3個の酸素とゆるく結びついた硝酸塩ははるかに分解しやすく、窒素を取り込むのに適している。
地球上の硝酸塩のほとんどは生命活動により作られるが、火星の場合、隕石の衝突や落雷などの熱衝撃で生成されると考えられている。研究チームでは今後、硝酸塩の生成が現在も火星で行われているのか、それとも今と違った環境の過去においてのみ行われていたのかを調べたいという。
〈参照〉
- Phys.Org: NASA's Curiosity rover finds fresh signs of ingredients for life on Mars
- PNAS: Evidence for indigenous nitrogen in sedimentary and aeolian deposits from the Curiosity rover investigations at Gale crater, Mars 論文
〈関連リンク〉
- NASA: http://www.nasa.gov/
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
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