従来より「大きくなった」冥王星
探査機「ニューホライズンズ」の望遠撮像装置「LORRI」による観測データから、もっとも基本的な謎であった冥王星の大きさが明らかにされた。その直径は2370kmで、従来の推定値よりやや大きい数値となっている。
「結果は推測通りでした。冥王星は、太陽系内でこれまでに知られている海王星以遠の天体の中で一番大きいことがわかりました。1930年の発見以来、その大きさについて論議が続いていましたが、やっと終止符を打つことができました」(米・ワシントン大学のBill McKinnonさん)。
冥王星が少し「大きくなった」ことで、従来の想定よりも密度は少し低くなり、内部の氷の割合は高くなる。冥王星の大きさが数十年間も謎であった理由は、大気という複雑な要素のためだ。一方で最大の衛星カロンには大気が無いため、地上の望遠鏡からでも簡単に直径がわかる。ニューホライズンズの観測により、これまでの値(直径1208km)が再確認された。
LORRIは冥王星の小さな衛星ニクスとヒドラにも焦点を合わせた。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)によって2005年に発見されたニクスとヒドラは、HSTの能力を持ってしても小さな光点にしか見えないため、ニューホライズンズが冥王星最接近を迎える最終週に行われる観測が待たれていたのだ。ニクスの大きさは約35km、ヒドラは約45kmで、表面が非常に明るく氷が存在しているかもしれないという。また、さらに小さい衛星ケルベロスとステュクスの大きさについては、今後送信されてくるデータが待たれるところだ。
昨日のニュース「ニューホライズンズ、いよいよ明日冥王星に最接近」でも紹介したカロンについては、さらに新しい画像が公開されている。広く深い谷のような地形が明らかになっており、これはグランド・キャニオン(平均の深さが約1200m、長さ446km、幅6~29km)よりも大きいようだ。周囲に明るい物質が飛び散ったように見える衝突クレーターと思われる地形や、北極領域の暗く不思議な模様も見えている。
NASAでは、ニューホライズンズのライブ・コンピュータ・シミュレーション「Eyes on Pluto」(英語のみ)をウェブ上で公開している。
LIVEモードを選ぶと、冥王星までの距離やニューホライズンズの速度、最接近までの時間などがリアルタイムで変化する様子が見られるほか、探査機がどの搭載機器を使用してどの天体を観測しているかわかる。探査機に搭乗しているかのような「RIDE-ALONG」、冥王星系の全体像(軌道と天体の位置)がわかる「OVERVIEW」なども選べる仕組みになっている。
〈参照〉
- NASA:
〈関連リンク〉
- 冥王星探査機ニューホライズンズ: http://pluto.jhuapl.edu/
- NASA: http://www.nasa.gov/
- 月探査情報ステーションブログ: http://moonstation.jp/ja/blog/
- 星ナビ.com:
- 2015年7月号 特集「ニューホライズンズ」「冥王星を探す・撮る」「発見者クライド・トンボー」
- こだわり天文書評:
- 「太陽系はここまでわかった」
- 「太陽系ビジュアルブック 改訂版」
- 「なぜ、めい王星は惑星じゃないの?」
- 「新しい太陽系」
- 「Planets Beyond - Discovering the Outer Solar System」
- 「IS PLUTO A PLANET?」
- 「Pluto Files」
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